1999-07-14-水曜日
Japan Publishing Consortium(JPC)特別セミナー
XMLの実際(入門編)とオンラインパブリッシング最新動向


場所/東京都新宿区 東京オペラシティタワービル48階 アップルコンピュータ(株) 本社セミナールーム
主催/JPC事務局(http://www.jpc.gr.jp/


XML最新動向 -XML標準化とその応用-
講師:岡部惠造 大塚商会 Nビジネス開発本部 Nビジネス推進室室長

Microsoft Office 2000等でも採用され、いよいよ実用的な利用がWEBでも模索されだしたXML。また、XMLはインターネット、イントラネット以外にも2001年から始まると言われているBSデータ放送や、衛星通信とカーナビとインターネットをリンクして車に情報を提供する、といった新しいサービスの記述言語としても注目されています。
しかし、XML自体がそもそも何かを把握している方はまだ少ないのが現状です。
そこで、「XMLとは何か?」の基本部分のお話から実際の活用事例まで、実際のツールのご紹介も含めてお話させていただきます。

アメリカでは去年から、SGMLより簡単でかつ、HTMLより汎用性が高いこの言語に注目が集まっている。
XMLは共通したルール、タグで記述すれば、どうスクリプトが構成されようが、簡単に情報を抜き出し、再利用することができる。

例えば、病院で患者の情報を管理する表を、HTMLのTABLEタグを使って作成したとしよう。
たいてい病院ごとに記述が異なるから、A病院にすでにある患者の名前、住所、どこが悪いのか、というカルテをB病院で必要になった時どこを参照すればいいのか、瞬時にわからなくなるはずである。その患者のA病院にあるカルテをB病院のカルテに変更する場合は、タグをはじめから書き直す必要が生まれるため、効率も悪い。

XMLはそういう手間を省くことができる。記述さえしっかりしていれば、すぐに探すことができる。それを共通のXMLタグと、XMLサーバーを使えば、データをそのままで簡単にレイアウトの変更ができるようになる。
現在、アメリカではXMLの仕様を業界ごとに策定している。業界ごとでタグの定義は異なるが、同業社間でやり取りを考えた場合効率はいい。その業界のフォーマットがわかっていれば、データの受け渡しもHTMLのタグに比べて楽に行われるようになる。
日本はこのXML の仕様策定が大幅に遅れている。このままではアメリカがきめた仕様を飲まざるえないのではないか?という危惧もある。それを阻止するためにも日本でもXMLフォーマットの策定と、啓蒙を急いで進める必要がある。

問題は、「その仕様がまだ完全に確定していないということと。」「XMLの構造や用語が複雑で、技術もまだ研究段階であること。」である。 ただツールはすでにマイクロソフトのoffice2000やIE5.0、マクロメディアのDreamWeaver、オラクル、ロータスなど、すでに販売を開始している。
XMLは不況で経営が不安定な企業の救世主になりえる可能性があるのだ。

参照Web→http://www.w3.org/TR/
参照書籍『XML完全攻略』
※この本が日本で一番ちゃんとXMLの解説らしいです。



オンラインパブリッシング最新動向
講師:大野一寿 電通 雑誌局 雑誌マーケティング部 主務

大手新聞社のインターネットサイトが、単なる本紙でのニュースをサマライズするものから、より積極的にインターネット上のポータルサービスを提供するという目的でリニューアルが行われたり、今年になってからの大手雑誌出版社の格雑誌毎のインターネットサイトの充実ぶりを窺うと、オンラインパブリッシング事業がビジネスとして大きく動き始めた機運を感じます。雑誌社のオンラインパブリッシング事情の最新情報を電通の大野氏に語っていただきます。

インターネットの登場により、「誰でも簡単に作品を発表すること」が可能になった。
そのため、今までの流通が変化しつつあり、不況知らずと言われた出版会社にも今、不況の波が来ているという。
その原因を「再版制度」や「そのうち紙がなくなるのではないか?」などという問題に見ることもできるが、一番の原因は、作家が出版社を使わずにインターネットで簡単に作品の発表、情報の発信をすることができるようになったからだという。

小説家の村上龍氏が発行するメールマガジンを始め、様々な作家が小説やマンガが消費者にインターネットを通じて直接提供するというように作者自身にも変化があらわれているといえよう。。
そうなると、今までのように本を発行するだけでは収入を得ることができなくなる。そこで今まで出版会社は乗り気ではなかったが、インターネットのビジネス、特に電子書籍の販売に本腰を入れようとしているのだ。

現在、様々な出版会社のコンテンツがあるが、まだ実際に販売されている書籍のタイトルや目次の紹介でおわっているものが多いそうだ。
その一方でWeb現代やWeb新潮など、記事内容を少し遅らせてWebに掲載するものや、写真家とタイアップしてその写真家の写真集のオンライン販売など、実験的にコンテンツを模索しているという。
それは今のWebコンテンツが「存在するだけのコンテンツ」から、「ユーザーが何度でも見に来てくれるコンテンツ」へ変化していることと一致する。 出版社ではコンテンツにユーザーが何度でも足を運んでくれる仕掛けを作ろうと一生懸命なのだそうだ。
それは「コンテンツのブランド力」、つまりデジタルだからできること、手軽さをコンテンツに盛り込むことで収入につながるものをつくろうとしている。

ちなみに現在のWebコンテンツでバナー広告の収入がそのまま利益になっている会社は、検索サイトだけだそうだ。たいていの企業はバナー広告で収入を得られる状況ではない。
それは消費者の気を引くコンテンツの情報が少ないことを意味する。たとえ、Webコンテンツを作っても消費者が食い付く情報がなければ意味がないのだ。

ちなみに11月にはソフトバンク、トーハン、セブンイレブンジャパン、ヤフーの4社がインターネット書籍販売を始める。
これは来年にも日本上陸をはたすのではないか?といわれるAmazon.comに対抗するためである一方、市場の再編をにらんだものだという。
出版社も電子書籍コンソーシアムを作り、電子化した本を衛星で配信する実験をはじめるそうだ。
ただ問題なのは現在のところ、ちゃんとした配信フォーマットが確定していないことである。PDF、HTML、XMLなどの中からどれが標準の仕様にさせるのか?
出版会社のWebでのビジネスはブラウザーの仕様や、多くの消費者が使うであろうフォーマットが決まらない限り、未来がみえないものになりそうだ。


最新技術紹介〜Flash 4J最新情報と新しいビジネス「Shockwave.com」
講師:坂口城治 マクロメディア プロダクトマーケティングマネージャー

7/30に発売になるMacromedia Flash 4J の新機能紹介と、アメリカでマクロメディアが新しく始めるWEBでのShockwaveコンテンツ配信ビジネスについてご紹介します。

Flash4では、今までの機能に加え、デフォルトで簡単なテトリスや さめがめ程度のゲームが作れることができる。
またドラック&ドロップの機能をサポートしたため、Finderライクなインタフェースの構築も可能になった。
例えば、Flash4の機能をフルに使えば、OSのエミュレータっぽいものをつくることができるのだ。また、cgiを組み合わせれば、yahoo!ページャーなどのような、ユーザー一人一人が異なったグラフィックインターフェイスをもつカスタマイズホームページの提供も可能になるという。
そしてformのタグをデフォルトでサポートしているため、EC/EDIもFlash4を使うことでアニメーションを使ったグラフィカルに飛んだインターフェース、ウィンドウショッピングをするような感覚をオンライン上で再現することができるかもと期待している。

しかしFlashがここまで多機能になると、Directorとの住みわけがきになる。
マクロメディアは、Flashを「webコンテンツのユーザビリティやアニメーションを構築するツール」、Directorを「ゲームやインタラクティブアートを構築するWebを含めた総合的なオーサリングツール」と考えているようだ。

というのも、マクロメディアの分析によると、CD-ROMマーケットはすでに死んでいるそうだ。実際、CD-ROMのマーケットはWebがコンテンツにおされ、デジタルコンテンツ全体の市場の3割にも満たなくなりつつあるという。
マクロメディアではその点をふまえて、shockwave.comというwebコンテンツを開始しようとしている。

このコンテンツは shockwaveと先程書いた、Flash4に実装された機能を全て盛り込んで構成されたサイトで、1999年8月1日からスタートする。
このサイトは、shockwaveで作られたゲームやアニメ、音楽をコンテンツとして提供していくそうだ。基本的にそのshockwaveを提供するのはクリエイターであり、マクロメディアはあくまで、彼等が制作すたモノを紹介する場所と、換金システムを提供するだけだという。

一度、shockwave.comにアクセスするとわかるが、ユーザーカスタマイズや、気にいったshockwaveは何度でもすぐに遊べるような仕掛けも、盛り込まれている。その中でユーザーは気に入ったshockwaveがあったらダウンロードし、お金を払って買うこともできるのだ(だいたい20ドルぐらいが上限だろうと見ているようだ。)
一応すべてのshockwaveが有料ではなく、提供しているクリエイターが価格を決めるのだという。(しかも登録にお金はかからない。)
shockwave.comは現在、英語版だけだが、来年のはじめには日本語版のサイトや他の言語のサイトも登場するという。また、それにあわせて、機能限定のDirectorを出すそうだ。
この機能限定のDirectorは特定のコンテンツを作ることを目的するパッケージで、それ以外のものをつくることはできない。 (例えばインベーダーゲームをつくる機能しか持たないDirectorでは、制作者はキャラクターを変更すること以外できない)

shockwave.comはあくまで今後主役になるであろう、クリエイター達に提供されるマーケットである。今後のビジネスの中心になることは間違いない。 企業はそこから、クリエイターを発掘し、大きなビジネスにつなげていってはどうだろうか?