バーバラ・ハマー
「テンダーフィクションズ」特別ビデオ上映のお知らせ

会場/東北芸術工科大学・本館411
日時/1999年11月16日(火)
17:00〜:映像コース3年展・ビデオ作品上映(一部)
19:10〜:「TENDER FICTIONS 」(1995・58分)特別上映
入場無料

※上映後、バーバラ・ハマー監督自身によるトーク・質疑応答があります。 是非お越し下さい。

(以下は山形国際ドキュメンタリー映画祭ホームページ
http://www.informatics.tuad.ac.jp/net-expo/ff/ff97/page/comp-11.html から抜粋させていただきました。)
●バーバラ・ハマー
1939年アメリカ、ハリウッド生まれ。60年代の終り頃から、8mmで映画を撮り始める。
その後、レズビアン・フェミニズムと出会い、現在まで77本もの実験映画や社会的メ ッセージの強い作品を発表。現代アメリカを代表する映画、ビデオ・アクティヴィス トのひとり。1992年初の長編ドキュメンタリー『ナイトレイト・キス』を発表、スタ
イリッシュな映像で同性愛の社会・文化史を検証し、1993年ベルリン国際映画祭北極熊賞、マドリッド女性監督映画祭ベスト・ドキュメンタリー賞など多数の賞を受賞。 1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭の審査委員長を務める。1996年本作『テンダ
ー・フィクションズ』はベルリン国際映画祭出品、アン・アーバー映画祭でイザベラ・リデル芸術賞を受賞。近年パリのポンピドゥーセンターなど各地でレトロスペクティブが開催されている。

●テンダー・フィクションズ
TenderFictions
監督・脚本・撮影・編集・録音・ナレーター:バーバラ・ハマー
音楽:モニカ、キャサリン・ジョニオー、パメラ・Z
製作:バーバラ・ハマー
製作会社・提供:バーバラ・ハマー・プロダクション
アメリカ/1995/英語/カラー/16mm/58分

1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭の審査委員長を務めたバーバラ・ハマーの新作は、ガートルード・シュタインの自叙伝『TenderButtons』をもじった題名が付さ れているように、自らの軌跡の自伝的探究であり、ゲイ社会の個人的なレポートであ る。また題名は“Tender”という言葉に象徴される一人称ドキュメンタリーとフィクション(Fiction)という、一見、対立した語句で構成されているが、ここにハマー のメッセージが集約されている。記憶というフィクション、真実も語られる時点でフ
ィクションになる事実を踏まえながら、ハマーは母親の日記の抜粋、シャーリー・テ ンプルに夢中だった頃から、現代に至る軌跡を綴っていく。 自分の30代の作品、16mmのフッテージ、1950年代につくられた教育映画『いかにして 現代女性になるか』などを織り込みモンタージュしながら、そうした映像を編集しコラージュする彼女自身の姿をカメラでとらえる。この自伝が“選択された”ものであることをそのシーンに集約させている。彼女自身の3つの声色によるナレーションは、多くのフェミニストや脱構築主義者の引用を始めユーモアと諧謔に富んでいる。ゲイでありフェミニストである彼女の姿勢が全編から浮かび上がる。(稲田隆紀)

●監督のことば
 私が『テンダー・フィクションズ』を作った意図は、主題として自叙伝を究明することでした。私は幼いころ、語る人によって、同じ出来事でも異なる描写がされるということに気付きました。ひとつの“真実”があるのではなく、真実は複数にあることを子供ながらに理解したのです。その後、代名詞を入れ替えることで物語の意味を
替えることができることを発見したときには驚きませんでした。スクーターで世界を巡る話を“私”“彼女”“彼”と主語を替えて3回語ります。違う代名詞を用いると、全く同じ物語が違う意味を持つのです。音色を変化させることで意味を変えることもできます。私は声の調子を変えて、フェミニストと男性、それぞれの評論家のパロディを演じ、どちらの声がより信用がおけるか、と観客に問いかけているのです。あらゆるものを残らず転覆しています。時間順に添った進行はしません。映画はぐるりと円を描いて映画そのものに戻ってきます。また、コンピューター、スーパー8、8mm、16mm、ビデオ、ビデオによる映像加工、教育映画、ハリウッド映画と、できるだけ多種多様な質の映像を用いています。異質な素材の断片が異なる意味を提示できるのです。これら共通点のない素材を集め、自分の個人的リズムのモンタージュによって編集することで、私は観客を複数の物語のなかに引き込むのと同時に、分析的かつ批評的であることを観客に求めているのです。1つの堅固な真実など存在しません。
あるのは柔らかな複数の真実、それが『テンダー・フィクションズ』です。